《MUMEI》 7月19日「ん…」 目を覚ますと机の対面でお兄ちゃんが寝ていた。 どうやら頼まれた仕掛けをした後、あたしも寝てしまったようだ。 立ち上がるとパサッと何かが落ちた。 お兄ちゃんが掛けてくれたであろう上衣を本人に返す。 今日お兄ちゃんがしているであろう約束を破らせるために足止めしてほしいと頼まれたけれど…。 お姉ちゃんがそこまでしてお兄ちゃんにこだわる理由が解らない。 確かに優しいし、たまにかっこいいときもある。 だけど、こんな睡眠薬入りココアみたいな見え見えの罠に引っ掛かるようなバカだし…。 まぁ、そんなお姉ちゃんに付き合うあたしもあたしなんだけど…。 なぜあたしがお姉ちゃんの指示を受け入れてこうまでしているのか? それは、お姉ちゃんのことが…天野鴒のことが、大好きだからだ。 愛している、と言い換えても良い。 もちろんあたしはレズでは無い。 あたしにとってお姉ちゃんはある時期までは『お兄ちゃん』で、 その『彼』が初恋の相手でそれが今まで続いているだけだ。 ――だからあたしはお兄ちゃんが羨ましい。 時計を見ると午後二時を周っている。 これで約束は反故に出来ただろう。 どんな文面で成功を伝えればお姉ちゃんは喜ぶだろう? そんなことを考えながら、あたしはリビングを後にした。 前へ |次へ |
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