《MUMEI》

飯を食べながら戸谷の一人語りをぼーっと官能小説を読みながら聞き流す。
珍しく、今日はいつも聞き役の立花も忙しそうにしていた。

メール画面と睨めっこしながらしきりに電子音が鳴り響く、立花が画面と百面相で面白い。

「恋人?」

「えっ……」

さりげなく聞いたのに、固まってしまった。

「いや、珍しくいっぱいメールしてるから?立花の兄貴はいつも電話だし、楽しそうにしてたから恋人出来たのかと?」

紅潮した顔で俺の問い掛けに頷く。

「あー、だから右耳に噛み痕あったのか。」

戸谷が立花の耳を引っ張ると確かに歯型が残っていた。

「うわ。随分気性の荒い彼女だな。」

「みっ、見た目ほど痛くないんだよ……!」

なんか、立花からそんな発言されると傷付く。

「三次元の女ってどんなかんじなんだ?」

女子に三次元って言っちゃう戸谷もどうかと思うけどな……。

「気性が荒いというか……優しくてかっこよくて非の打ち所が無くて……」

立花は彼女にぞっこんだ。

「暴力を振るうのに?」

戸谷が余計なことを言ってくる。

「暴力じゃないよ……!」

必死に訴えてくる。

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