《MUMEI》 7月20日不眠症の私は自室で一人、膝を抱えていた。 窓から見える空が少しずつ白んで来る。 はぁ…、私はなんて惨めなんだろう? ぼんやりとした頭で纏まらない考えがぐるぐると回っている。 昨日、ユウは電話を掛けて来なかった。 あんな風に誰かと出掛けることなんてなかったから、内心期待していたのに。 嫌われたのだろうか? 私は確かに愛想のいい人間では無い。 だからっていきなりそんな…。 こんなことを考えていても気分が沈むだけだ。 気にしないようにしよう…。 太陽がほぼ頂点に達したころ、昨日から沈黙を続けて来た携帯電話が鳴り出した。 「…もしもし?」 『もしもし、梢か?』 「…他に誰が出るの?」 『確かに』 掛けて来たのはもちろんユウだ。『昨日は誘えなくてごめんな… 疲れが溜まってたみたいで、夜まで寝てたんだ。』 本当だろうか…? 「…それは本当の理由? 私が嫌で、避けたというわけでは無い?」 『…なんでそうなるんだ?』 怒った? どうやら真実らしい。 「…ごめんなさい 誤解だったみたい。」 『…まあいいよ ところで、今日は空いてる?』 「…空いてるよ」 『じゃあ、今日は買い物に行くか。』 「はぁ…」 同年代がそこまで買い物にこだわる理由がよく解らない…。 が、ユウと行ってみたら判るかも知れないし、少し楽しみだ。 『今から迎えに行くから』 「ん… 待ってる」 そうと決まれば準備をしようかな…。 …準備と言っても顔を洗って着替えるだけなのですぐに終わった。 服は前回と同じくTシャツとジーンズ。 というか、他の服を持っていないだけなのだが…。 財布と携帯電話を肩掛けカバンに入れて玄関を出た。 しばらく待っていると 「待たせたか?」 と、聞きなれた声が聞こえた。 丸一日待ったよ…。 「…少しね」 さすがにそんなことは口に出さない。 「悪いな…」 「…気にしなくて、いい」 「そう言ってくれると、助かる じゃあ、行くか」 またあの痛い荷台か…。 そう思って乗ろうとすると、そこにタオルが縛り付けられていた。 少し、嬉しい…。 こうして、今日は痛い思いをせずに出発出来たのだった。 前へ |次へ |
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