《MUMEI》

「もうセックスした?」

戸谷にはデリカシーが足りてない。

「ま……だ……」

「なんだ童貞か。」

俺も戸谷みたいに安心した。それでこそ立花だ。

「目の下に怪我してない?」

「ああ、花束ぶつけられたから……。」

どうしたら花束にぶつかるシチュエーションになるんだよ。

「メールの束縛もヤバいし、強烈な女だな?」

空気は読まない食べるものな、あの戸谷にまで言わしめるとは中々濃ゆい。


「立花って、野球部の先輩にストーカーしてたから危ない奴かと思っていたけど正常だったみたいだな、安心した。」

「ストーカーだなんて大袈裟な……」

大袈裟なんかじゃない、自覚しているのか立花の目が泳いでいた。
毎朝決まった時間に待ち伏せたり、新聞の切り抜きをファイリングしたり、写真を集めたり名前は確か……、球界の王子様……?笑っちゃうよな。


「ついに先輩病を卒業したならお赤飯炊かなきゃだな昼八。」

俺達の間で先輩病は不治の病であった、立花が先輩に固執するあまりに先輩以外のものに興味も持てずに、人生を棒に振るう恐ろしい病だ。


「随分とクレイジーな彼女だけれど、先輩病は治りそうだな。
俺なんて先輩と両想いにならないと無理だと思っていたからね。」

一生敵わない不治の病だとばかり思っていた。ちょっと可愛いから火遊びでもされて痛い目を見れば懲りるかなとも考えていたところだ。

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