《MUMEI》
期待
「夢人、悪いねぇ」

「ふっ。…これくらいいいだろ」

「こんなコンテストで、ワイロ…なんて」

「もう1つあるんだ、実は」

「なぁに?また悪いこと?」

「ちがう。」

そう言って夢人は、おもむろにあたしの耳元へ顔を近づけてきた。

「……しようぜ」

「〜……っ//」

「んだよ。こっちにも移るんだよ、お前の照れが」

「ご、ごめん」

「はぁ〜もぉ〜、2人して赤くなるとかハズいだろ」

「周り誰もいないのに?」

「いや、だけどさ…」

「ていうか、夢人があぁいうこと言うから」

「あぁ、キス?」

そう、夢人は…。

3分間のパフォーマンスで、“みんなの前でキスしようぜ”って言ったの。

そんなの。

期待しちゃうよ。

カレカノって言っても、好き同士じゃないし。

あたしの片想い、だから…。

「…い、命!」

「あ、ごめ…何?」

「だからぁ、練習しようぜって」

「何の?」

「キスの」

「はぁぁ〜〜!?」

「そんなに驚く?」

「いや、あのね。うん、ちょっと落ち着こう、夢人。」

「いや、お前が落ち着けよ」

「いや、いくらなんでもそれは…本番だけで良くない?」

「命、何言ってんの」

「ほぇ?」

「俺が言ってんのは、どんなふうにやるかだけ確かめようってこと」

「あ、あぁ…そういうこと。今もやるのかと思った」

ふぅ…期待、しちゃった。

もう、あたしの脳ミソどうにかしてる。

頑張れ、命。

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