《MUMEI》
「うん……」
「受かってるといいな」
一見柔らかそうな髪だったのに、触ると整髪料でゴソゴソしていた。
「いいよ…、あんま興味ないし…、それにテレビで見たことある奴ばっか来ててさ…、
俺監督さんに一番質問受けなかったし。
……あーあ、何で俺行ったんだろ、演技なんかちっとも勉強してねーし…、恥ずかしかったー… 」
「はは…、そっか…」
――本当は受かってればいいなんて嘘だ。
これ以上遠くにいかれたら堪ったもんじゃない。
どんどん格好良くなって
どんどん綺麗になる
裕斗。
裕斗とやっと連絡が取れて、居ても経ってもいられず、直ぐに近くまで迎えに行く位…
俺の気持ちは焦りぬいている。
今この手の平の中に
裕斗がいて
温かさまで感じているのに……
酷く遠くに感じて…
―― ならない。
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