《MUMEI》












「高原は本当すっかりサラリーマンって感じになったなあ」

「なんだよそれ…」


今日は中学卒業以来始めての同窓会。
高校を出て一年と少し経ち、久しぶりに会うクラスメイトはそれぞれに色々な道に進んでいた。

俺は県立の情報処理科を出た事もあって地元の大手の印刷工場に事務で就職した。


それなりに忙しくてやり甲斐もあって充実した日々を送っている。
休日は職場で知り合った同僚と釣りに行ったり、地元就職組みの高校時代のダチと遊んでいたり。


中学時代前嶋と共通のダチだった本間とは実に4年ぶりで。


本間も地元就職組みだった。今度飲もうとアドレスを交換した。




「そういえば中学出てから前嶋と会ってるか?」


「……え?、…、全然会ってないよ」


「そうかー、仲良かったから会ってるかと思ってた」


本間は枝豆の空を器に入れ、ジョッキを傾けた。


「だって遠く行っちまったしさ…、今どうしてんのかな…」



俺は前嶋の名前を聞いただけで胸が苦しくなって。
さっきまで勢いよく飲んでいた焼酎はもう口に含む気分じゃなくなった。

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