《MUMEI》

スキンヘッドはたった三十秒ほどの間に、ただの人間の手によって手下が葬られる様を、夢の中の出来事のような非現実感と共に眺めていた。
馬鹿な・・・・!
俺ら鬼化した者は、普通の人間の二三倍の筋力と反射神経を持っているはずなんだそ?
それが一瞬のうちにこの有り様だと?
黒い鎧とマント・・・・、そして不思議な力を宿す大剣を振り回す剣士・・・・
。スキンヘッドの頭の中で、聞き覚えのある噂が記憶として浮上して来る。
黒い殺戮者・・・・!
戦闘にさいしては、鬼以上に残虐非情な
魔人と化かすと言われる剣士の噂が、
いつの頃からか、大陸の中で囁かれるようになっていた。
人は奴をジェノサイダーと呼ぶ。
では、奴が『それ』だと言うのか?
口をあんぐり開けて見守るスキンヘッドの目の前で、剣士はくずおれる大男の鬼の体から血塗れた剣を引き抜くと、
「やれやれ・・・・、またツマらぬものを斬っちまった」とボヤいている。

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