《MUMEI》

約三十分後、僕の家に着いた。
やはりテンションは下がったままだけれど。
「…じゃあ、僕の部屋まで来てくれるかな」
「おう」
当然のように抱き抱えてくれる由。
…これで気が無いとは驚きだ。

僕の部屋にはベッドとクローゼットしか無い。
なので僕と由がベッドに並んで座ることになる。
…これって告白した上で既成事実も作れるよね?
「…で、僕の好きな人の話だっけ?」
「別に無理に言わなくてもいいぞ」
どうしよう…。
由と仲がいい女がいることはわかっている。
翼ちゃんの工作で不和が発生するまで待ってもいいか…?
いや、仲が深まる前に言ってしまおう。
「……じゃあ、言うよ」
ヤバい、すごく緊張する。
「実は僕、ゆ……」
「お姉ちゃん、おかえり〜!!」
唐突に部屋の扉が開き、翼ちゃんが入って来た。
ちっ…間の悪いヤツだ…。
「うん、ただいま」
「久しぶりのお姉ちゃんだ〜」
笑顔で抱き着いてくる。
うぅ……苦しい。
「ねぇ、お兄ちゃん
今日はせっかくお姉ちゃんが帰って来たんだから、
パーティーとかしたいんだけど」
気持ちは嬉しいけど…由に迷惑掛からないかな?
「そうだな…
よし、ちょっと準備してくるから
ある程度休めたら来てくれ」
そう言い残して部屋を出て行く由。
部屋には僕と翼ちゃんが残された。
「やっと二人きりになれた…
お姉ちゃん…大事な話があるんだけど」

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