《MUMEI》

大剣を背中の鞘に収め、マントをひろう。
銃弾が開けた穴をしげしげと眺め、少しがっかりしたようなため息を吐きながら、男は再びマントをまとった。
「さてと・・・・」
生き残りの奴に聞きたい事がある。
水の流れる場所の近くには、村か街があるはずだ。
それを聞きだせればよし。
運が良ければ『奴』・・・・、『白い翼を持つ者』の手がかりも掴めるかも知れない。
雇われ傭兵をしながら、『白い翼を持つ者』の蛛の糸のような痕跡をたどり、海を渡りこの大陸まで流れて来た。
確実に『奴』のいる場所に近づいている予感があった。
『奴』を追い詰め、復讐を果たし、無念のうちに死んでいった友の墓前に、『奴』の血まみれの首を捧げる。
そのために泥にまみれながら、必殺の
剣術を磨いてきたのだ。
師匠は何度も言っていた。
『復讐などつまらん。最後に残るのは虚しさだけだ』と。
だが男にはそれが全てだった。
後の事など、どうなろうと知った事では無い。
例え世界が滅ぼうと、肩をすくめるだけさ・・・・。

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