《MUMEI》

終始ニコニコしていて、こんな幸福そうな立花は始めてみた。


「あ、首にキスマ。」

目敏く見付けてしまう。
頭から湯気が立ちのぼる、瞳を潤ませて少女趣味には美味しい。
しかし、俺の嫁には到底敵わない。


「てか、歯形……!」

これも噛まれていた。


「大変だ、立花が食われてしまう……!」

昼八の慌てる姿が面白い。


「本当、いちいち気にするほどのものじゃないんだ。……ったあ!」

傷口を指でグリグリ押すといい具合に叫んだ。


「断るのも勇気だぞ?嫌なら嫌だって言えよ。」

昼八にしては珍しく熱心だ。


「大丈夫、噛む時は加減してるんだってさ……最初が痛いだけで本当犬がじゃれるようなものでさ……」

それが犬じゃなくて、狼だったらどうするんだ……?なんて悪い予感しかしない。




「立花を追おう。」

お節介だと思いながら、昼八のノリは嫌いじゃないので付き合ってやる。
鈍感で尾行なんて全く気付かない立花だ。
電話をしている真後ろに立っても気付かれない。

内容は来週の日曜日に八時に駅で待ち合わせ……、全部筒抜けだ。

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