《MUMEI》 ・ 「……キーホルダー」 「…え」 静かに、静かに やっと、やっと聞き取れる位の声で聞こえてきた、物の名前。 「キーホルダー…、ありがとう」 「……、前嶋」 「何度も、何度も…、助けてもらった…」 真っすぐに駆け寄って。 自転車に跨ぐ前嶋を 俺は後ろから抱きしめた。 小刻みに震える体。 小さな…、俺が大きくなりすぎて小さく感じるようになってしまった体。 「キーホルダーだけだった!いつも俺の傍にいてくれたのは! 俺、どうしてもこれ離せなくて!高原の事ずっとずっと大好きで!」 「………っ…」 言葉が出なくて。 俺はただきつく抱きしめるだけで 「たかはらぁ…、たかはらぁ…」 やっとの想いで自転車から前嶋を降ろして。 ぐしゃぐしゃに泣く前嶋を俺は全身全霊を込めて抱きしめた。 前へ |次へ |
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