《MUMEI》
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「電車二人で乗るのって久し振りだなー」
「うん…久し振り」
車窓は殆ど日が落ち、僅かに残る夕焼けと、限りなく黒に近い青になってしまった。
まだ5時をまわったばかりなのに…
――少しづつ、冬に近づいている。
裕斗は携帯を取り出しメールをチェックいる。
周りの人間も用事を終えた後なのか、これからなのか、
各々の事に想いをはせながら、別々の方向に気持ちを向かせている。
俺も真似をして携帯をいじってみる。
あまり興味の無いサイトを開いては閉じる。
ふと斜めを見、外を眺める。
――そこには冴えない男が一人、窓に映っていた。
所々剃り残しのある髭、
10分カットで揃えた短めの、つまらない髪型…。
平凡過ぎる顔の造りにもう溜め息も出ない。
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