《MUMEI》 周囲の散乱する屍を見回す男の視線が、 スキンヘッドの地点で止まった。 ズボンを半分おろしかけた下半身は砂の上に転がっているが、上半身が見当たらない。 ズタズタにひきちぎられた傷口から察するに、どうやらこの砂漠にはサメがいるらしい。 そして女の姿も消えている。 さらに視界を巡らせ、その隅に何かをとらえた男は反射的に背後へ飛びのく。 気配さえ感じさせずいつの間にか背後に 佇んでいた女に、 「やあ、あんた、大丈夫かい?」 男は頭を掻きつつ、照れくさそうに話しかけた。 女の無表情な顔に、にいっと妖しい笑みが浮かんだ。 桃色の舌が艶やかな唇の間を、チロリと走る。 露出した重たげな乳房を、男に向かって捧げるごとく持ち上げて魅せる。 「へへ♪ひょっとして、誘われちゃってんのかな、俺。」 まんざらでもなさそうな顔に、次の瞬間には凄絶な笑みが浮かんでいた。 女の上半身が弾けるように裂けたと見るや、今まで男が居た空間でガツンっ!と牙の噛み合う音が響く。 四五メートルを一気に飛び退がりながら、電光石火の勢いで抜き放たれた大剣に赤黒い舌が蛇のように絡みついた。 「覚醒者か!!」 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |