《MUMEI》
悪寒
.






その日の夜、洋平は中々寝付けないでいた。

ベッドに入り、眠気を誘おうとするが、それが逆に目を覚ましてしまう。


「あの写真…」


井上の事があってから、ずっとズボンのポケットにしまっていた例の写真。


「やっぱ気になる。」


恐くてそれ以降見れなかったのだが、やはり気になって仕方がなかった。



ベッドから起き上がり、部屋の電気を付ける。
いきなり視界が明るくなった為に、眩しさで顔をしかめた。


「確かこのズボンの中に……あったあっ…た‥?」


今日履いていたズボンのポケットを探ってみると、それは確かにそこにあったが、気のせいか、触れた瞬間洋平の背筋を凍らせた。


「‥何だ?今の悪寒…。」

辺りを何気に見回してみるが、当然洋平以外は誰もいない。


「ま、まぁいいや!何でもない!気のせい、気のせい!!」


自分に何度もそう言い聞かせながら、思い切って写真を取り出した。







「う…っ!!また‥変わってる…。」


誰かの体が消えてるとかじゃない。



「これってつまり…」


僅かな希望も消えた気がした。


明日のニュースの結果を写真が教えてくれていた。


もうそこには井上の姿はなかったのだ。

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