《MUMEI》
転んだ。
秋と言えどまだ夏の名残が残る公園には子供ずれの家族やちょっとしたデートスポットなのか若いカップルもちらほら。
公園…より緑地、といった方がいいのか、
大きい湖を囲うように道が出来ていて道の所々にはベンチが設けられていた。
俺は人気の無い所を探してそこの近くにあるベンチに腰かけた。
聞こえてくるのは小鳥の囀りや遠くのはしゃぐ子供たちの微かな声
俺はこの空間が大好きだった。
暫くこのまま何をするでもなく目の前にある道をひたすら眺めるだけだった。
ふと、辺りを見回して見ると小さな男の子が辞書のような本をぎゅっと抱き締めながらてくてくと今まで眺めていた道を歩いてくるのを見た。
珍しいなぐらいにしか思わなかった。
何気無くその子を見ていると丁度俺の前で石に躓いて転けた。
一瞬何が起こったのか状況把握できてないその子は転けたままの状態で暫しフリーズ。
状況が掴めたところで転んだ拍子に投げ出された本と眼鏡を取りに行こうと立ち上がり服に付いた砂を叩いて落とす。
膝からはさっきついた真新しい擦り傷が目立っていた。
何を思ったか、俺は立ち上がった。
「君、さっき転けたっしょ?大丈夫?」
ぽけっとにたまたまあった絆創膏を渡すとひどく驚いた顔をして俺を見上げた。
「い、いいいつからいたんですか!?」
え、酷くね?
「え、いつって最初っか「み、みみみてたんですか!?転けたの!!」いや、見てなかったら心配してないからね?そのままスルーしてたからね?」
どうやらこの子はプライドが高いらしい。
顔を茹で蛸のように真っ赤にして恥ずかしさをこれでもかって言うくらいアピールしていた。

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