《MUMEI》

今日は土曜日。



私は一人で買い物に来ている。



「わぁ、この服可愛い」



仁衣菜が手に取ったのはヒラヒラのワンピースだった。



試着室に入って試着をしてみる。



「あっ、これいいかも〜」



お店の店員さんが「お似合いですよ〜」とにっこり笑う。



仁衣菜はそのワンピースを買うことにした。



その店を出て「次はどこいこっかな〜」とうろうろしていると



ひとりの見慣れた男の子がいた。




……瑛斗だ。



仁衣菜はあっ、と言って瑛斗ーと瑛斗に駆け寄ろうとした。



けど仁衣菜はぴたっと足を止めた。





あ、あれ?瑛斗もしかして女の人といる……?





瑛斗は見知らぬ女の人と、うでを組みながら歩いていた。



さっと仁衣菜は服と服の影に隠れた。




も、もしかして浮気……っ?




瑛斗に限ってそれはないと思った。



けど腕組んでるし……



あっ、お姉さんとかかもっ!



でも瑛斗は一人っ子だっけ……




仁衣菜は必死で言い訳をいろいろ考えた。



けど、もう思いつかないや……



瑛斗がぱっとこっちを向いた。



仁衣菜はあっと思って駆け出した。



目から大粒の涙がぽろぽろとこぼれた。



仁衣菜は瑛斗が完全に見えなくなるまで走り続けた。

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