《MUMEI》 「…で、大事な話って何かな?」 僕は翼ちゃんに出来るだけ不機嫌に聞こえないように言った。 「お姉ちゃんが告白する前にしておきたい話があって…」 キミは運が良いなぁ…。 僕は悪いけど。 「その話って?」 「…あたしね、小さいころからずっと好きな人がいてさ」 「僕と同じだね」 「うん…それで、ずっとその人に告白出来なかったんだけど、昨日やっと決心したの」 良かったね。 「だ、だからお姉ちゃん…」 僕の手を握って見詰めてくる翼ちゃん。 「…何かな?」 「えと…雰囲気作り…かな?」 何のだよ…。 「あのー…」 「お姉ちゃん!?」 今度はいきなり大きな声を出す翼ちゃん。 びっくりするじゃないか…。 「小さいころからずっと好きでした! だから、あたしを恋人にして下さい!! …ダメかな、れいにぃ」 最後に行くほど声が萎んでいる。 ちなみに、れいにぃとは小さい頃に翼ちゃんが僕を呼んでいた呼び名みたいなものだ。 しかし、好きになった幼馴染みの妹から告白されるとは…。 想定外すぎる。 「…翼ちゃんは僕が由のことを好きなのは知ってるよね?」 「うん れいにぃのことなら大体知ってるよ。」 「…じゃあ、断られると思わなかったのかな?」 動揺を隠して訊く。 「想いだけでも伝えておきたくて…」 頬を赤く染めながら言う。 いやいや…。 「…言わせて貰うけど、僕は由が好きだから その…ごめんね?」 「ううん…一緒にいられるだけで幸せだから」 頭の中が春だよ…。 「これからも、全力でれいにぃを手伝うよ …そ、その代わりに二人きりのときだけでいいから ……呼び捨てにしてくれないかな?」 まあ…そのくらいなら。 「いいよ、翼」 「ありがとう!」 抱き付いてくる翼ちゃん。 「あんまり待たせても悪いし、 そろそろ行こうか」 僕は翼ちゃんから逃れるためにも、中村家へ移動した。 前へ |次へ |
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