《MUMEI》

神林先輩に親子のように立花が手を引かれながら、駅に向かって消えてゆく。立花は小さく、学校でと囁いていた。


「あれ、いいのか?」

呆気に取られた昼八は先輩のオーラで無理に押さえ付けられていた感情を爆発させた。


「……諦めよう。立花も覚悟はあるみたいだし、事後報告を待つか。サイトのアクセス稼ぎのネタになるかもしれない。」

蛇に睨まれた蛙の気持ちがわかった。あんな、がんじがらめ状態を楽しめる立花のポジティブさには尊敬する……あいつはきっとドMだ。


「ネットで流すのもほどほどにな……いつか、立花が間違いに気付いたらいつも通りに戻れる環境にしよう。あいつ薄幸の相が出ている。」

言いたかったであろうものは全て飲み込み、それだけ発して帰る。

俺も家に帰って積んでるゲームやアニメを観ないといけないし、昼八のオーバーなリアクション芸の観察もこれくらいでいいか。


「ってか!あー……、立花の恋人のこと気付いてただろ戸谷……言わないとかひど過ぎる!恥かいたじゃん。もう過ぎたからいいけどなっ、ばーか!」

去り際のばーか!と言う捨て台詞が雑魚臭さを醸し出していた。

明日にはケロッとしているような男だ、追いかける必要はないだろう。
普通の感覚に一番近いのは昼八だが一番に餓鬼臭いのもあいつだ。

からかうのも困らせるのも、天然の立花より昼八のがキレが良くて反応が面白い。

これで俺の周りにつるぺた妹と巨乳の義姉とかお節介な美尻の幼なじみとか出来たら、文句無いよね。
早く家に帰ってジャージに着替えてだらだらしよう、外出したら疲れた。

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