《MUMEI》

ドレッドヘアは絶叫を上げながら、闇の中を走り始めた。
その目の前に突如、逆さになった男の顔が浮かびあがる。
カーボーイハットをかぶり、いつもキザったらしい喋りで、自分をおちょくっていた その顔を見た途端、ドレッドヘアの心に恐怖以外の怒りの感情がわき起こり、
どりゃーーっ!と、その背中に飛び蹴りを食らわせる。
頭が背中の方へ折れ曲がり、景色を逆さに見ている状態では、さすがに方向感覚がつかめないのだろう。
ヨタヨタと闇の向こうに消えていく
元仲間 の姿に、ヒステリックな嘲笑を浴びせかけた。
「ざまあーっ!!前からてめえはムシが好かなかったんだ!」
闇に向かいめちゃくちゃにAK47を連射するドレッドヘアの姿は、完全にキレていた。
ブンッ!!!
その頭上を風の唸る音を響かせて、何か重い物体が通り過ぎた。
振り返ると、心臓を刺し貫かれて死んだ筈の大男が、無数の刺の付いた鉄棒を
よたりながら振り回していた。
その目は焦点が合っておらず、口の端から緑色の泡を吹いている。
「脳みそーっ!何か知らねーけど・・
・・脳みそがめちゃくちゃ食いてぇー
よーー」
「やかましい!!」
AK47が火を吹き、大男の頭が赤く弾けた。
「ふー、全くよー、お前らはおとなしく死んでろよ」
だが気がつくと周囲の闇 では、無数の
うめき声が遠く近く上がり始めていた。
「くそ。死体どもがあちこちで目を覚まし始めやがった。お前らの墓は後でちゃんと立ててやるから、恨むなや。
あーばーよー!」
ドレッドヘアは棒状になった右腕を、
挨拶がてらひょいと上げて、闇の中へ走り去った。

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