《MUMEI》
あたしは今、マンガの中の主人公とは反対側
なんだろうここは。

白。それしか見当たらない。

私は、はぁ。とため息をついてみた。

白くなって寒さを感じることも、熱くなって体温を感じることも出来なかった。

「絶望でもすればいいのに」

こんなとこに連れてこられて。

どうして今自分が存在してるのかは分からないが・・・

こんな、綿飴のなかに放り込まれたような世界で生きろと言われても感謝なんてできない。



「あなたは、別れを告げたんですよ」
「別れ?」
「下の世界に別れを言ってきたんです」
「・・・私が?」
「そう、あなたが」
「……あなたは?」

後ろを振り返る。もう一度呼んでみた。

「…こっちです」

横を見る。

白い空間で、そこだけに少し色を感じた。

「そこに居るの?」

「はい。居ます」

「なんでこんなところに居るの?」

「それはあなたに聞きたいです」

フワッと、体が軽くなった。と同時に、何かに包まれたような感覚を覚えた。

「私は、あなたを迎えに来たのです」

私は、この世界で初めて、温かさを感じた。

「…どうして?」

私がそう聞くと、また視界がただの白に戻り、目の前に柱のようなものが立っていた。

その柱は徐々に形を変え、私の背の倍はある高さまで伸びた。

「大きすぎない?」

私が呟くと瞬時にその柱は縮み、丁度あたま一つ分ぐらいの違いになった。

よく見ると背中に異様な形のものが生えている。

「…お待たせして申し訳ございません、お嬢様」

その柱は、いつの間にか顔のような物があり、私に向かって話しかけていた。

「私のことは、エンジェルで構いませんので」

私は、理解した。そして、納得した。

あれは羽だ。…いや、翼だ。

私にはやっぱり、ただの白にしか見えなかったが。



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