《MUMEI》

それより少し前に時がさかのぼる夕暮れ時、虎ノ介とベイビーブラッドが激闘を演じる地点から数キロ辺りの距離を、
四頭の馬牛 に引かれた コンテナが、
砂埃を立てて通り過ぎようとしていた。
コンテナは隣の町まで商品の買い付けに行っていた、商人の物である。。
隣町と言っても、馬車を急がせ片道三日間かかる距離だ。
当然多くの危険が待ち受ける旅路のために、用心棒が雇われている。
その二人の用心棒はコンテナの屋根の上で、ライフルを胸に抱えるようにして
周囲に目を走らせていたが、砂上に放置
されている戦車やら重機関銃の類いが、やたら散見され始めると顔色を曇らせた。
「ここらへんは昔、覚醒者と軍隊が
激戦をした地らしいな」
「ああ、トライオキシンも相当大量に
ばらまかれたと言う話だ。生きている
人間には害は無いが、百年消えないガスが、夜になるとここら一帯のホトケどもを土の中から目覚めさせる」
「見ろよ、カウントがすげえ事になってる」
「マスクをつけた方がよいかもな。
生きている人間には害が無いと言っても、あんまり吸いすぎると、御臨終の後、土の中で生き返るって話もあるらしいからな」
「土の中ならまだしも、火で燃やされてる最中だったら、たまったもんじゃないな」
「ご先祖様もありがたい遺産を残してくれたもんだ」
皮肉の後二人はマスクを着けると、一人が足元のコンテナの木製の屋根を、コンコンとノックして言った。
「旦那、トライオキシンが大分大量に漂ってますぜ。念のためにマスクを着けた方がいいですぜ」

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