《MUMEI》

アツシさんが、意識を取り戻してた

アツシ!、アツシ!

カオリさん、アツシさんにしがみつき、名前を叫んでた

大丈夫か?

おじさんの問いかけに、我に返ったアツシさんが

カオリ!、無事か、真奈美!何で真奈美が?!

状況を、把握できてないみたいだった

救急車、どうする?

貴子叔母さんの言葉に

呼ばないで下さい、穏便に、穏便に済ませて下さい

間宮の母親が、身勝手な事を言ってたんだ

来るな!、お前らは帰れ!

叫ぶ間宮

来るなって言ってんのが、わかんねーのかよ!

包丁を、俺に向け、怒鳴る間宮

真奈美を殺すぞ!

間宮が、間宮の胸元に、包丁をあてがったんだ

捨てた女だろ?
未練あんのか?

うるさい!、黙れ!

真奈美がバージンじゃねーからって、オモチャにして、捨てといて
未練タラタラかよ?

うるさい!黙れ!黙れ!

綺麗になったろう、真奈美
不細工になってたら、未練無かったんか?

黙れと言ってるのが聞こえないのか?!

俺が綺麗にしたんだよ
真奈美のおっぱい、大きくなってるぜ
お前の知ってる真奈美は、もう居ないんだよ

黙れぇぇ!

真奈美の全ては、俺のもんだ
真っ白な肌も、柔らかい唇も
お前に惚れてた過去すら、俺のもんなんだよ

うるさい!黙れって言ってんだろうが!

そして、真奈美の未来も、俺のもんだ
お前の影すら、どこにもねーんだよ

聞こえないのか!、黙れ!

聞こえてるさ
お前の思い通りにならもんなんか、ひとつもねーんだよ

ま、真奈美を殺すぞ!

俺に惚れたままの真奈美をか?
真奈美は、俺の女だ
お前に出来ることなんざ、ひとつもねーんだよ!

うるさい!!

自ら腰を使ってくるぜ、甘えたような、美しい顔を見せて、キスをねだって来るんだ

嘘だぁ!
でたらめを言うな!

俺の、真奈美なんだよ

う、嘘だぁ、嘘だぁ!

そうよ、私の全ては翔のものよ
過去も未来も、この身体も、全て翔のもの

うそだぁぁぁぁ!

間宮が錯乱したように、叫んでた

俺から真奈美を、奪えるのか?
お前にそれが、出来るってのか?!
やってみやがれ!腐れ野郎が!!

うわぁぁぁぁあ!!

真奈美を、放り出し
俺に包丁を振りかざして来た間宮

翔!
お兄ちゃん!

真奈美と、春奈の叫び声が聞こえた

一歩踏み込み、固く握った拳を、間宮の顔面に向け、振り抜いた

直立したまま、間宮が真後ろに倒れたんだ

投げ出された包丁が、宙を舞って、床に落ちた

そう、何度も刺されてたまっかよ

駆け寄って来た、真奈美と春奈を抱き抱えた
そして

おじさん、警察

そう、言ったんだ

息子に駆け寄ってた間宮の母親が

それだけは勘弁してください
お願いします、お願いします

そう、叫んでた

救急車、呼ぶわね
生きてるのかしら?

間宮を見ながら、貴子叔母さんが言ったんだ

間宮の顔はひしゃげ、鼻と耳から血を流してた

どんすんだ?おばさん
息子のために救急車呼ばねーのか?
呼んだら警察沙汰だ
選ばせてやるやるよ

見下ろし、そう告げた俺に

救急車だけ、お願いします
何も無かったことにしてください、何でもしますから!

甘えるな、あんたが息子をダメにしたんだよ
貴子叔母さん、警察

わかったわ

お願いします、警察は

間宮の母親の言葉を無視して

タカシー!!、
てめー、なに、企んでやがった!

大声で怒鳴ったんだ

拳が固くなる

全身にアドレナリンが駆け巡る

止めて!!翔を止めて!

動いた俺を見て、真奈美が叫んだ

おじさんが、俺を抱きしめるように押さえてた

早く警察にタカシを渡して!
翔、殺しちゃうよ!

お兄ちゃん、冷静になって!
お兄ちゃん!
お兄ちゃん!

落ち着け、翔、落ち着けって!

アツシさんまで、俺を止めてたんだ

俺、どんな顔をしてたんだろう

タカシ、震えながら、失禁してやがったんだ

………

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