《MUMEI》 . 隆之の部屋。 俺たちが地区優勝したときの写真が、額に入れられて下げられている。 パソコンの主電源に触れる隆之の指を見てた俺の視界は、 差し出されたチョコの箱に塞がれた。 「喰うか?」 「ああ。サンキュ…」 つまんで口に入れる、甘い球体 噛み砕く 「ん?」 トロリと広がる変わった甘みに、俺は隆之の顔を窺った。 「ラ・フランスのワイン入り」 「ワイン…」 「ああ。アルコールは飛ばしてあるけどな」 眼を細める隆之の表情(カオ)を見るの…久しぶりだ。 何か、言わないと… パソコンはまだ立ち上がらない。 「………」 沈黙が苦しい 二、三分は経ったかな やっべ…なんか寒気がする 何か言わないと 隆之はさっきから、腕時計を見てる 「たかゆ…」 「ごめん、佑二」 「え?」 何が? ぽかんとしてたら 正面から抱き締められた。 「ちょっ…隆之?!」 隆之はどんな表情だったのかは、分からないけど 「最近の薬は、《熱くなる》とは限らないんだ」 隆之の言葉の意味は 「は…?」 「それから」 俺の体が勝手に応えてきた 「二分十八秒、計算通り。」 耳に吹き込まれる声… 「佑二は優秀だね…」 俺の髪を撫でる手、吐息 暖かい . 前へ |次へ |
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