《MUMEI》
舞踏会の夜 1
ルティが選んでくれたドレスを纏う。
一番軽いものだ。
………結構普通。
あの………ばか。

「姫様、いかがいたしました」
「別に………」
隣に立つナイト。
正装だ。
重そうだな。
私より。

「ルティ、私の側を離れるな」
「御意」
「………行こう」
「はい。姫様」

斜め後ろを歩くルティ。
………恐い。
「ルティ、前を歩け」
「御意」
前を歩く。

他城の人の目が痛い。
ルティの袖を握る。
「………姫様?」
「………別に………迷子になるのが怖いだけ………へ………変な勘違いしないで」
「………御意」
ルティは袖から私の手を離し、私の手を握った。
………温かい。

「リリィ様、一曲、ご一緒願います」
「………え………?」
振り返ると、若い男がいた。
………ああ………あの城の。
私の城と友好関係がある。
「………ルティ………」
「行ってらっしゃいませ」
そう言って、ルティは手を離した。

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