《MUMEI》

馬の俊敏さと牛の頑強さを馳せ持つ馬牛は、前文明末期には重宝され、計画的に繁殖させられたが、それに加え戦争による混乱中に、遺伝子研究所のさまざまな実験生物達が 外部へ流出する事故などがあり、今や地球上の生態系は大きく狂い始めていた。
その昔、神話やファンタジーの中でしか
存在しなかった生物が、現実のものとして生きる世界。
そしてその新しい食物連鎖の頂点に立つ者の座を狙い、人間、鬼、覚醒者の間で、長い間激しい闘いが続いた。
(鬼はどちらかと言えば覚醒者寄り・・・・、と言うより覚醒者になりそこなった者が鬼になると思われている
フシがあったが・・・・)
覚醒者も人間もこの半世紀のうちに 、お互いに総数の半分を失い、このままでは双方が共倒れとなって自滅するしかない、と気が付くや、
戦争は一気に膠着状態に陥った。
個体としては圧倒的強者の覚醒者が 、
人を絶滅させるのをためらったのは、まだ数のうえでは人に比較して少数派なのと、繁殖能力の弱さにあった。
そのため一部の覚醒者の中には 、人間の女を略奪して犯す者や、そうした暴虐 行為をしない、または村を他の覚醒者の侵略から守ると言う条件で、人質婚などを要求してくる者までいた。
しかしそうした行為の結果産まれる子も、ほとんどはおぞましい奇形で多くは育たず、逆にまるっきり普通の人間として産まれてきた者は、何らかの精神異常をきたした。
そして覚醒者間ではさらに悲惨でおぞましい
結果をもたらした。
歴史上三人産まれたとされる、『それら』は完全な『発狂者』で、『覚醒者』
さえもて余す彼らは、天変地異に匹敵する災害をもたらした後、『覚醒者』自身の手によって処断された。
数百の『覚醒者』を犠牲にしたうえである。
それ以降『覚醒者』でさえ、『覚醒者』間で子を成す事をタブー視するようになったのであった。

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