《MUMEI》
2
「で?これからどうすんだよ?」
取り敢えず共に行動する事になり、当てもなく街中を歩く二人
これからどうすればいいのかを問うてやれば
リトル・ファーは何を考えているのか解らない表情を向けながら
「……取り敢えず、その人間臭さを、何とかしないと」
周りを見回し始めたリトル・ファー、そこに丁度通り掛る人影
当然、ヒトではない
リトル・ファーは突然その行く手を阻む様に前へと出ると
その手の中に、等々に彼女の等身と同じ程丈のある鎌が現れる
ソレを構えると大きく振り上げ
そして躊躇なくその人影へと振り降ろせば
鮮やかな鮮血が辺りに飛び散った
「……っ!?」
行き成り、何をしているのか
驚くばかりの田上へを一瞥を向けると
リトル・ファーはその手に付いた血液を田上へと撫でつけ始めた
饐えた臭いと、感じる滑りに顔を顰めるが
リトル・ファーは我関せずといった表情だ
「これで、大丈夫」
「大丈夫って、俺、このままか?」
すっかり汚れてしまった自身の姿につい問うてしまえば
リトルファーは暫く無言でた田上を見やり
そして徐に田上の手引き、改めて歩き始めた
行き成りのそれに、だがその手を振り払う事が出来ず
されるがまま付いて行けば
リトルファーの脚が、不意に止まる
落して見せた視線の先にあったのは、蛇口
脚元に伸びるホースを掴み上げるとその蛇口をひねり
勢いよく出てきた水を田上へと浴びせかけていた
「――っ!?」
何をするのか、と睨みつけてやれば
「……これで、綺麗にはなった。」
いきましょ、と田上がずぶ濡れに鳴っている事など構う事もなく
そのまま歩きだしたリトル・ファーへ
田上は最早言っても無駄だと何を言う事もせずに置いた
「……で?今から、何所か行く当てでもあるのか?」
何か目的が合って歩いている様なソレではなく
まるで散歩でもしているかの様な様に怪訝な顔の田上
リトル・ファーは僅かばかり首だけを振り向かせ、そして
「……野菜ジュース、買いにいくの」
拘る処がどうやらそこなのか、それだけはどうあっても譲らないらしい
目的の自販機を道すがらに見つけ、それを購入する
「飲む?」
差し出されるソレを首を振って拒めば
僅かばかりリトル・ファーは残念そうな顔
何故かひどく悪い事をしている様な気になってしまい
一口だけなら、とそれを受け取った
一口飲んでみれば、とろり濃いソレが喉に流れ込んでくる
田上が野菜ジュースだと認識しているソレとは明らかに違い
後味はほのかに血の味がした
「……どうか、した?」
僅かに顔を顰めた事に気付き
リトル・ファーは不思議気に首をかしげてくる
そう。イーティン・バニーにとって(コレ)は普通なのだ
今、田上は明らかに普通からは逸脱した場所に自分があるのだ、と
改めて認識させられてしまう
自身がヒトであるとばれ、喰い殺されるよりかはましだと
その血の味の濃いトマトジュースを一気に飲み干してやった
「……私の、ジュース」
リトルファーの呟く様な呟きでソレをずべて飲み干してしまった事に気付き
慌てて謝る事をし、新しいソレを買ってやる
「……ありがと」
負手腐った様な顔から一変、嬉しそうな表情
こんな表情も出来るのだと
田上もついつられ顔を綻ばしていた
「あら、随分と仲良くなった様ね」
不意に何処からか聞こえてきた声
辺りを見回してみるが、何処にもその姿はなく
だが確かにすぐ間近でその声は聞こえてくる
「けれどリトル・ファー。その人間をどうするつもり?」
また声が聞こえ、その声の方を向いて直れば
其処にクイン・ローズの姿があった
リトル・ファーの顔を覗き込むように間近に寄り
そして睨む様な視線
「……あなたこそ、ラヴィにどうなって貰いたいの?」
だがリトルファーは動じることなくクイン・ローズを見据え逆に問う事をしてやれば
クイン・ローズは瞬間口籠り、そして
「狂えばいいと、思っているわ。いっそ、理性が完璧に無くなってしまう程に」
「どうして?」
「あのヒトが、そう望んでいるから」
「ラヴィが、そう言ったの?」
問うたソレに、クインローズは答えて返す事はせず
唯穏やかに笑みを浮かべて見せるばかりだ

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