《MUMEI》

出てきたプリクラを鋏の置いてある特設コーナーで切り取って、記念としてスマフォのケース内側に見えないようにお互いで貼った。

「今日のメガネ君は超、女の子でユキちゃんだよ。撮ってた人もメガネ君のことモデルだと思ってたみたい」

「そんな……どうみても男ですよ?」

鼻先がくっつきそうなところまで密着して、声をひそめて話し合う。
先輩の両耳のピアスの数までくっきり見えて、心臓がばくばく鳴っている。

「貰った名刺の中に女性誌が混じってる」

鞄から一枚取り出された名刺には横文字のお洒落なロゴが入っていた、冗談だと思っていたのに、複雑だ。
目の前に翳された名刺越しに唇を奪われた。

「……っ!通行人に見られましたよ」

油断ならない、呼吸と同じくらい自然にキスを仕掛けてくる。名刺にキスマークが付いているので、これも持ち帰ろう。

「いいよ、見せたかったから。人目が気にならないから心地好いなあ。メガネ君は?癖になりそう?」

愉快犯だ、俺の滑稽な反応を楽しんでいるのだ。


「事務所の迷惑になります……先輩の足手まといにはなりたくないです」

「こんな可愛い子なら許してくれるって、今日は二人でお似合いカップルになろうよ」

「なりたい……です、でも、でも先輩のが可愛いですよ!」

先輩には勝てない。

「俺の方がメガネ君のこと可愛がっているんだから、認めなよ。今って照れてる?怒ってる?泣きそう?」

「ふぇ……」

耳の中に舌を入れられて、力が入らない。

「参った?」

耳元で囁かれて、頷くしかない。

「メガネ君、真っ赤っか……」

クツクツ先輩が笑いを堪えていた。

「それは、先輩がエッチくするから……」

「うん、メガネ君と一緒に居るとエッチな気持ちになるよね」

はっきり宣う先輩の余裕がエッチなんですが……!欲望を明け透けにしても嫌悪に結び付かないのはこのカッコイイ人の魅力の一つだ。

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