《MUMEI》

戦争は人間の狂気を限りなく肥大化させる。
ある科学者が、「覚醒者」は異星のウイルス生命体に乗っ取られた、人間とは違う存在だと発表した事により、研究は狂気の様相を帯びた。
人間と違う存在と認識した者に対して行使される残虐性は、人間に対するものの比では無い。
生きたまま切り刻み解剖する、焼く、溶かす。
連日連夜研究所の奥からこだまするのは、『覚醒者』達の苦悶の絶叫であった。
科学的研究の名の下に、己の残虐性を満たす者もいたであろう。
第二次世界大戦中の731石井細菌部隊がよみがえったかのような、彼らの行為に不快を感じる者もいたが、そうした声を発する事で、己自体に『覚醒者』の疑惑が降りかかるとなれば、誰も軍の暴走を敢えてとがめようとはしなかった。
実際に普通の人間でありながら。『覚醒者』の疑惑をかけられ殺された者は、
大戦中数万人を越えると言われている。

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