《MUMEI》

軍にとっては一般市民の犠牲者も、さして問題では無かった。
最も重要なのは、早急に『効率良く覚醒者を殺す事の出来る兵器』を量産する事であって、一部の軍人などは
「彼らは人類にとって尊い犠牲となってくれたのだ」 と、公言していたほどである。
『覚醒者』とみなされた者は、ある者はナパームの超高熱で焼かれ、ある者は
液体窒素の超低温にさらされた。
強酸性の霧を吹きかけられるものもいた。
そうした血の実験でわかった事は、やはり個体によって、耐久性に差があると言う変わりばえの無い結果のみ。
だが、ある科学者がひとつの事に着目した。
もともと『覚醒者』は、彗星がもたらしたウイルスに感染して、突然変異を起こした元人類である。
あらゆる形態を持つ『覚醒者』でも、その一点のみは共通している。
ならば、そのウイルスを殺す別のウイルスを培養すればよい。
ウイルスにはウイルスを。
その結果培養されたウイルスこそが、
トライオキシンである。
『覚醒者』を『覚醒者』たらしめるウイルスだけを殺し、普通の人間に無害な兵器の発明は、それまで人類が劣勢だった戦場に劇的な逆転をもたらした。
初めのうちは・・・・

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