《MUMEI》 channel王子5俺のご機嫌は最高潮だ。街中に俺の可愛い恋人を紹介出来るのだから。 メガネ君は自分の魅力を全く理解出来ていない。 魅力が潰れないようにナチュラルな女優顔を活かしてメイクした、女子中高生達はメガネ君を憧れや羨望の目で見ていたというのに、怖がって俺にしがみついたり上目遣いで「意地悪」なんて囁かれてしまったらこのままどこか路地裏に連れて行きたくなる。 俺はメガネ君に愛されて愛したい反面、ぐちゃぐちゃに泣かせてしまいたい。 雑念を振り切って、ずっと二人で行きたかったカップル割引のある知り合いの店に連れてきた。 パスタが美味いらしい。 喉仏が隠れるようにウィッグと、下半身の筋肉が分からないような服装を選んだ。それが想像以上に似合っている。 これが、可愛い可愛い男の子で俺の恋人だなんて誰が考えつくだろう。 「パスタ好き?」 好き?と聞くと過敏に反応して一生懸命に頷く仕種が大のお気に入りだ。 店員に人数と予約を入れていた名前を伝えると、知ったようにカップル割引の印を伝票に書いた。 希望したつい立てのある奥の二人対面式のテーブルに案内された。 適当にパスタと食後にドルチェを注文する。 「……先輩先輩、高そうなところですよ」 「大丈夫、誕生日だから奢らせて?お願い」 恋人に気を遣わせてのワリカンは嫌いだ、この方がデートっぽいしね。 元々小柄だったメガネ君がしおらしく縮こませている……このまま食べてしまいたい。 「先輩の誕生日なのに払わせるのは、おかしいです……」 「いやいや、今日はいいんだよ。」 俺がメガネ君の為に何かすることが気持ち良い、そして申し訳なさそうに俺に屈している姿に欲情する。 メガネ君の指を噛むと柔らかくて甘い蜜が出てきそうだ。 「いっ……」 「お待たせいたしました、前菜です」 自制が効かず、噛み過ぎたタイミングで料理が運ばれてきた。 「ゴメン、歯形付いた」 体中に傷を残留させるのが今の俺の一番のお楽しみである。無理矢理女装させて下着まで女物で揃えてアイデンティティを崩すのもその一環だ。 ドロドロした俺の腹の底を知るよしも無いド天然な彼をつい唆して辱めてしまう。 大事そうに俺の噛み痕を擦って確認するところは、マゾの才能があると睨んでいる。 「俺って、美味しいんですか?兄ちゃんが小さな頃の俺のお尻かじってたって言ってました」 「えっ、なにそれ狡い。俺も噛みたい」 俺も大概だが、ヒメの性癖も異常だ。お尻とか、果物じゃないか。 「痛いのはちょっと……」 「苦手?」 メガネ君が遠慮がちに前菜を口に運んでいると、パスタが運ばれてきた。 「お待たせしました」 「ペペロンチーノこっちです。」 トマトベースのパスタがメガネ君の前に運ばれた。上手に口の周りを汚さず食べるので、きちんと行儀作法を教えられたんだと感心する。 俺はあまり汚したのをばれないようにクリーム系は避けてしまう。辛いのは元々好きだしね。 店員が料理を運ぶ為、横切る度にびくついて固まるのが可愛い。 「お皿、宜しいですか?」 店員が営業スマイルで器を片してゆく。 「……落ち着きな」 どこかでボロが出ないかメガネ君は挙動不審だ。手を繋いでドルチェを待つ。 「季節のドルチェお待たせしました、マロンのパンナコッタとピスタチオのジェラートです。」 メガネ君の前にドルチェが出された、メガネ君を引っくるめて一つのオブジェみたいだ。 俺の見立てに狂い無し。 「美味しそう。食べさせて、あーん」 口を開いて待つと、耳を素早く隠した、耳も美味しそうだけどね。 「いや、ひとくち頂戴」 「で……ですよね。」 スプーンを翳されても、唇のドルチェに吸い込まれてしまう。 「ちょっと……それ以上はホテルでやってよ」 以前バーで会った時よりも伸びた髪を後ろに結びオールバックにしている。 髪を黒に戻して清潔感のある好青年風の「知り合い」だ。 前へ |次へ |
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