《MUMEI》
パン作り
 「おい、トラァ!一体朝っぱらから何の騒動だ!?」
とある天気のよい休日の早朝
台所からけたたましい音が聞こえ始めていた
一体何の騒動か
寝るに寝れずに居た皆が一斉に部屋から出てきていた
「……これは、環さんですか?一体、何を……」
「音がすごくて眠れなーい!トラぁ、何とかしてよ」
「何で俺に言うんだよ」
自分で言いに行けばいいだろう、と
話を振られた岡部は怪訝な顔
だがこの音が睡眠を妨害しているのも事実
仕方がない、と溜息をつきながら岡部はその音の発生場所であるだろう台所へ
「……一体何の騒動だ?環」
戸を開いてみれば
其処には勇ましい表情で何かを叩きつけている岡本 環の姿があった
だが岡部の存在に気が付いていないのか
岡本は尚もなにかを叩きつける事を続ける
「環」
「……」
岡部が呼びかけてみるが余程集中しているのか返答はない
「ターマ公」
「……」
平田が声をかけても同じ
「タマちゃーん」
「環さん」
小森と桜岡が呼んでも同じ
ソレからも黙々と岡本は作業を続け、そして
「出来たぁ!!」
オーブンがチンという音とともにその焼き上がりを知らせる
香ばしい匂いが部屋中に漂い始め、岡本は満足気な笑い顔だ
「あー。楽しかった。みんな、それ食べちゃっていいから」
「食べないのですか?環さん」
「いいの。唯、作りたかっただけだから」
「……今度は一体何が気に入らなかったんだか」
「べ、別に、何も……」
「嘘付け。お前、何か腹立つことがあると何か作るだろ。」
「そ、そんな事無いもん!何よ、高虎の馬鹿!!」
結局はいつもの言い合いになってしまい
岡本はすっかり機嫌を損ね自室へ
後に残された男四人
置き去りにされた焼きたてのパンを眺めながら
岡本の機嫌をどう取ったものかと、頭を悩ませるばかりだった……

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫