《MUMEI》 消えた「……そういえば、レッカ君はどこに?」 羽田はそう聞きながら、何気なくベッドに置かれた毛玉を見た。 よくよく見ると、それは昨日見たあの不思議な生き物が丸まっている姿だった。 たしか、名前はテラといったか。 かわいらしく丸くなり、ぐっすりと眠り込んでいるようだ。 「レッカはあれでも最年少の討伐隊員なので、あそこへ行きましたよ」 凜はそう言って、暴れ回る魚マボロシを指差した。 「討伐隊?」 「はい。マボロシの討伐隊です。ほら、もう始まってます」 凜が言ったと同時に、マボロシの体から煙があがった。 さらに続けて、何かが弾ける音とマボロシの悲鳴らしき声が響き渡る。 「あれは…?」 「討伐隊の攻撃です。今回のマボロシは巨大なので、遠方攻撃で片をつけるみたいですね」 「そんなものがあるの。……レッカ君もあそこに?」 「そうですよ。彼は意外と正義感が強いんです。自由参加の戦闘訓練にもはりきって参加してるみたいですし」 「でも、まだ子供なのに」 「この世界に、子供、大人はありませんよ」 「……そうなんだ」 羽田自身としては納得できないが、自分の感覚で考えてはいけないのだろう。 羽田は目に見えて弱っていくマボロシを見た。 どんな攻撃をしているのかわからないが、一撃ごとに確実に相手を弱らせている。 「あと少しですね」 凜の冷静な声を肯定するように、マボロシはズシンと建物の上へ倒れた。 そして、そのまま横倒しになったマボロシは悲鳴のようなか細い声を一声あげると、すっと消えていった。 前へ |次へ |
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