《MUMEI》

人は事故に遭う寸前に、周囲の出来事をスローモーションで見る事があると言う。
今のララが認識しているのがそれだった。
目の前にゆっくりベッドの角が迫って来る。
体は金縛りにあったように動かず、成す術も無く最悪の瞬間を待つ。
「ララちゃーん!!」
叫ぶ声と共に、間に割り込んで来たのはマレーナだった。
再び時間が元の流れを取り戻した時、
ララは柔らかな胸に顔を埋めていた。
一方ベッドの角に背中を打ち付けられたマレーナは、苦し気な呻き声を上げている。
「マレーナ?!」
ララは急いで起き上がった。
「二人とも大丈夫か?」
父のペドロが頭を抱えながらふらふら起き上がると、心配そうに近ずいて来る。
「ええ・・・・、私は大丈夫。あなたと、ララちゃんは?」

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