《MUMEI》
きっと、大丈夫
 さっきの警備隊の言葉から、この地域の周りは大勢の警備隊に囲まれていることは間違いない。
普通の道を逃げても捕まるだけ。
かといって、どこか建物に隠れたとしてもいずれは見つかるだろう。

おそらく、ここに集結している警備隊はかなりの数だ。

この中で唯一、逃げることができそうな道。

ユウゴは素早く道路に視線を走らせた。
「手伝え、ユキナ」
そう言ってユウゴは近くのマンホールに手をかけた。
「え、下水道?」
「ここが一番逃げれる可能性が高いんだよ。早くしろ」
ユキナは渋々といった様子でユウゴと同じように構えた。
「……せー、の!」
ガゴンっと重たそうな音をたてて蓋が開くと、ユウゴは先にユキナを穴へ入らせ、その後から自分も入った。
穴の中からなんとか蓋を閉じると、二人は水が流れる暗闇へと降り立った。

 ユウゴがペンライトで辺りを照らす。
「ほんとにここ、平気なの?」
ユキナは悪臭に顔をしかめながら言った。
「わかんねえよ。もしかしたら、ここにも奴らが配置されてるかも」
「え、じゃあ」
「ああ。ここで見つかったら隠れる場所もないし、かなり不利だな」
ユウゴはそう言って、左右に延びた穴にライトをあてる。
今のところ、ユウゴたち以外に人の気配はない。

「……どっちに行けばいいか、わかるの?」
「いや、全然」
「サトシがいればね」
ユキナが俯きながら呟いた。
「ああ、そういやあいつ、地図持ってたもんな」
「……どこいったんだろ」
 さっき車の下から抜け出すチャンスを得た時、奴らは言っていた。

『あのガキがいたぞ』と。

 警備隊たちが探していたのはユウゴたち三人。
しかし、ユウゴとユキナはここにいる。
「見つかったんだよね」
ユキナの声は暗い。
「大丈夫だろ。あいつガキのくせに頭いいし、いろいろ道知ってるから、きっと逃げ切ってるさ」
ユウゴはわざと明るくそう言うと、右に向けて歩き出した。

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