《MUMEI》
8月11日
毎月第二土曜日は鴒の定期検査の日だ。
朝早く、俺は鴒を病院へ送っていた。
「7月は調子良かったし、問題無いでしょ
面倒だなぁ…」
荷台で鴒がぼやく。
「お前は怪我のこともあるんだから、仕方ないだろ?」
「そーだけどさ…」
しばらくぶつぶつと言っていたが、病院についたら諦めがついたようだ。
「夕方に迎えに来るよ」
「うん…
じゃ、行ってくるよ」
俺は、鴒がエントランスの扉をくぐるまで見守っていた。

帰ろうと踵を返すと見覚えのある車が目の前に停まった。
「よう、色男」
窓越しに声を掛けてくる女性。
中村 烏…俺と翼の母親だ。
「こんな昼間に珍しいな」
「仕事だよ仕事
もっとも、今帰るとこだけど」
母親らしくない言葉使いだ。
「しかし、こんな年でもう息子の嫁がいるなんて、私は幸せ者だなぁ」
「鴒とはそういう関係じゃ…」
「そうか?
燕の娘の方は気があるようだし、お前だってまんざらじゃないんだろう?」
燕とは鴒の母親のことだ。
「ははは、悩め若人
私は帰る」
弄るだけいじって満足したのかエンジン音をならして行ってしまった。
というか、
「なんで乗せて行ってくれなかったんだ…?」

家に帰ると母はすでに寝室で寝ていた。

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