《MUMEI》

態度にだして甘えてくるのはアイツだが、実は俺のほうがずっとアイツに依存している。
大切な、恋人。
たった6日間一緒に過ごしただけで、もうそれが身体の一部のように癒着してしまって、いざアイツがいなくなるとぽっかりと身体の一部が欠損したような感覚に陥る。
もともと一人は嫌いじゃない。むしろ孤独であることは俺にとって何にもかえがたい安息だ。

アイツがいない。
気を遣って控えていた煙草も今は自由だ。山盛りの灰皿、タールがべっとり張りつく感覚。ゆれる煙。時計の音がやたらとでかい。

何だよ、前だってずっと一人だっただろ。
変化のない穏やかな生活。風呂に花は咲かないし、ベッドは広い、毛布を奪われることもない。
完全無欠の平和。

違う、何かが足りない。

ただちょっと会えないだけでオーバーなのはわかってる。
だが俺たちにとって、今日という日は貴重な1日だ。30分の1。わずかな欠片だとしても大切にしたいというこの独占欲に似た気持ちは、馬鹿でウザくて自意識過剰だが、それ以上に愛情というものの側面でもある。

だから。
早く帰ってこい。

久しく一人になった6日目の夜。はじめて孤独を孤独と思えた。この感覚を、俺は1ヶ月後に噛み締めるのだろうか。

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