《MUMEI》
暖かい涙
  〜麻子視点〜


私は、もう自分の居場所が全てなくなって

しまった気がして

俯いて歩いてたの。

頬に冷たい雫が通るのを感じながら。


そしたら君の声が聞こえた。

私は、驚いて声のする方を見上げた。

君が心配そうに

私に声をかけてくれてたんだ。


・・・・・・言うつもりなんてなかった。

だって優斗の中に

私の居場所がないことは

・・・・・・分かっていたから。


でも・・・

君が、今日私の元気がなかったことに

気がついてくれたから。


やっぱりどうしても

君の中に私の居場所が

欲しいと思ってしまったんだ。

君の優しさが

私だけに降り注げばいいって

思ってしまったんだ・・・。


気がついたら

君に抱きついてて

また涙を流してた。

でもさっきみたいに

冷たい涙じゃなくて

・・・暖かい涙だった。


君がそっと抱きしめてくれたから

私の気持ち全てを詰め込んで

ギューッと抱きしめた。


もう我慢出来なかった。

大好きな君が

私の目の前にいる・・・。

苦しいぐらい大好きで

欲しくて欲しくて

たまらなかった。


知ってたのに・・・。

私じゃあ駄目だってこと。

分かってたのに・・・。

言ったら崩れちゃうものが沢山あるってこと。

でも、もう無理だった。


伝えたかった。

受け入れて貰えなくても

誰にも言えず

この恋を終わらせたくなかった。

私が優斗を好きだったこと

なかったことにしたくなかった。


例え何か失うものがあったとしても・・・。


だから伝えたの。

"好き"って

優斗は、私を優しく

離した。


そしたら、急に

汚いことを考えて

実行した自分が許せなくなった。

香奈ごめんね・・・。

だから私、分かってるからって言って

一刻もはやく優斗から

離れようとした。


私が優斗を好きな気持ち全て

捨ててしまおうと思った。

だから"バイバイ"って言葉を使ったの。

"忘れていいよ"って言ったの。


それなのに

優斗は

"ありがとう"って

汚い私の気持ちを受け取ってくれた。

"忘れたりしないよ"って

私が優斗のこと好きだったことを

なかったことにしたりしなかった。



"また明日"って聞いて

涙が出た。

その涙もやっぱり


暖かかった・・・。

明日からも

私は、優斗と今まで通り接しても

いいんだよね?


優斗の言葉のおかげで

さっきの自分に対する嫌悪感は

消えていた。


優斗・・・。

大好きだよ。




この気持ちが過去のものになるのは

少ししてからだけど

そのきっかけは

すぐにやって来た。

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