《MUMEI》
Wind vs Metal
次の日。
いつも通りに学校に通い授業を受ける平凡な日々。

昨日何があったか覚えていない。何が起きたのかわからない。
昨日の、散歩のときの記憶だけ、すっかりきれいに消えているのだ。

特別事故にあったというわけでもなさそうだし、いったいどうしてしまったのだろう。

「はい、今日の授業はここまで」

いっせいに教室に飛び交う声。かばんを持って部活へ向かう生徒たち。
その声は俺にもかかってくる。

「護(ゆづる)ー。一緒に帰ろうぜ―。」

その言い方だと男のようだが、この人物は女。
幼馴染である、閏 深景(うるう みかげ)だ。
アパートの部屋が隣で、昔からの付き合いだった。

おうと答えようとした時。

「3-Bの都川(つかわ)護さん、生徒会室に来て下さい。繰り返します…」

と放送が入った。
深景はチッと舌打ちをして、

「さっさと来いよー。門の前で待っててやるからー。」

首もとで二つに縛った長い黒髪を揺らし、廊下へ出ていく。
俺も急いで生徒会室へ向かおうと廊下に出ると、

「護、気をつけろよ」

後ろを向いたままの深景が、そっと呟いた。

何がと聞こうとした途端、じゃあ待ってるからな―といって走り去ってしまった。

深景の言葉に「俺なんか悪いことしたか?」と思いつつも生徒会室へ向かう。

「失礼しまー…あれ?」

誰もいない生徒会室。並べられた机の上に、一切れの紙。
読んでみると、自分への手紙のようだった。

『都川 護、体育館裏にて待つ。
  尚、この紙は読んだ証拠として処分して下さい。』

機械で書かれたような完璧な字。
この場所について「今度は告白か?」とドキドキしつつも体育館裏へ向かう。


「来ましたね」

体育館裏で待っていたのは、学級委員長の相沢 優衣。

待てよ、こんな静かな人が俺に告白??そんなわけないよなぁ
                                …あれ?昨日――――

昨日の記憶が頭に映る。
逃げようと動き始めるそのときは、もう遅かった。

ギリギリと痛む右腕は、がっしりと優衣の右腕に掴まれていた。
堕天使のような冷酷な瞳。

「やはり、消し方が浅かったようですね。なら」

優衣の左の手のひらに、銀色の物体が地面から吸い上げられ、手のひらにがっしりとおさまったのは、鋼の刃。

「あなたを消すしかないですね」

この世の常識から完全に外れてしまった能力を目の前に震え、優衣の腕を引っ張ったりして取ろうとする。

すごい速さで迫り来る刃。
思わず目をつぶる―――、、、痛みがない。

ゆっくりと目をあけるとそこには、俺の目の前で優衣の方を向き仁王立ちしている深景の姿。
これは幻覚かと思うほどに傷は見当たらない。

「やっぱり、世話のかかるやつだな、護」

後ろをちらりと向いて優しい笑みを見せる。

「深景!?なんでこんなとこに…」

深景はハァとため息をついて、

「お前を助けるために…」

深景の周りに強い風が巻き起こり、草は巻き上げられる。  

「決まってんだろ!!」

その途端深景を取り巻いていた風が、一斉に優衣に飛びつく。
優衣は重そうな刃で風を切り刻む。

「No.04閏 深景。なぜ対象を護る?あなたもUNITの一員」

「昔からの好なんだ…こいつは殺させない」

「そうですか…なら、裏切り者もろとも排除を執行します」

地面から巻き上げられるたくさんの鉄くず。
それが空中で合体し、いくつもの刃が生み出される。

「望むところだよ」

深景の周囲からものすごい風が吹き上げ、深景を中心とした竜巻のようなものができる。

何も声が出せない自分。


体育館裏は戦場と化した。

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