《MUMEI》
突然のサヨナラ
施設に戻ると、俺を待ってる奴が居たんだ

スーツ男が二人、どこからともなく表れた、
張り込んでやがったんだ

コイツら、警察官だ
警察手帳と何かの書類を、園長に見せてた

君はここから出ることになった
一緒に来てもらうよ、荷物をまとめなさい

スーツ男が言ったんだ

園長の指示で、職員が俺の荷物をまとめてた

従うほか、無いんだな

ここに、俺の居場所は無いってことか?

恵太!

車に乗り込むとき、マリコが叫んでた

駆け寄ってきたマリコに

お別れみたいだよ、カズヤに、有り難うと伝えてといてね

そう、マリコに言って、足早に車に乗ったんだ

さっき、警察官に言われた
俺の居場所がバレた今、友達を危険に巻き込むことになる、と、

従うしか、ない

ちょっとの間だけど、楽しかったな
忘れない
カズヤと銭湯に行ったこと

マリコの胸に甘えたことも

忘れない

忘れられないよ

楽しかったんだ

走り出した車

淋しさが込み上げて来た

何でかな?
あんなに短い時間だったのに、誰よりも仲良くなれた気がした

昔から、親しい友達なんて、居なかったしな

特別すぎる環境で暮らしてたから、仕方ないって、思ってたし

……… そして、俺は、真知子に引き渡されたんだ

見知らぬマンションの一室で、真知子が待ってたんだ

ここに、監禁するわよ
貴方が暴れたりするからよ、普通に暮らさせたかったのに

監禁?、おだやかじゃないね?

口封じに、殺されるよりマシでしょ?

何が、どうなったんだよ?

思ってたより、警察上層部まで奴等の手が延びてたって事よ
貴方が出所したことも、鍵を持ってることも明らかになったのよ

そう、

そう、じゃないわよ!
貴方は生き証人よ!
それに、高橋一族の中核なのよ!

何でそんなに一族にこだわるの?

好きだからよ
私が生まれた家だし、確かに腐ってるけど、マトモな一族だって、数多く居るのよ

マトモか
ヤクザと変わらないと、思うけどね

貴方のお父様は、戦ったわよ
アンタは、逃げるの?!

現に、逃げてばかりじゃねーかよ

暴力で解決できるわけないでしょ!

全部話せよ、知ってることを

その、つもりよ

真知子、真顔で俺に、そう言ったんだ

…………

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