《MUMEI》

すると白い霧の中を、また人影のようなものが横ぎった。
二つ・・・・三つ・・・・。
間違いない!奴らはいる。
闇の中に潜み、こちらを窺う死人の気配を用心棒は察知した。


一方コンテナの中では、仮眠をとるとはいっても眠れない五人の人間が、最小限の隙間以外は厳重に板を打ち付けた黒い窓の 外を、窺うように息を潜めていた。
御者と用心棒は二つある窓のすぐ傍、
マレーナは先程の衝撃で背中を打ったために気分が優れないのか、床に固定されたベッドの上で横になり、そのかたわらでペドロが心配そうに付き添っている。
その四人を斜に構えたような態度で、
部屋の隅で膝を抱えて体育座りしたララが眺めていた。
「あ・・・・!」
そのララが不意に声を上げると、顔を上げる。
ペドロがその目を見ると、どことも知れない虚空を見つめていた。
「来る!!」

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