《MUMEI》

ギャルルルルルルルルルーー!


闇の向こうから不快な不協和音が、凄いスピードで接近して来る。
次の瞬間、休息のために馬車から数メートル離れた位置に生える、ひねこびた
一本松に繋がれていた馬牛達の方向から、ブギャオーーー!と悲痛な絶叫が轟いた。
「来やがったか!!」
用心棒がライフルの銃口を向けながらそちらを見ると、船の錨―いかり―のような鉄塊に馬牛の一匹が胴体を貫かれて、砂上をのたうち回っていた。
馬牛を貫いたその錨から鎖が繋がって、
闇の中へと消えている。


ギャリリリリリリリリリーー!


今度は鎖の巻かれる音がして、綱を引きちぎられた馬牛が一匹、あっと言う間に
闇の中へとひきづり込まれていった。
黒い無数の人影がその馬牛に飛びかかっていくと、バラバラに引きちぎられる様が白い霧の中に影絵のごとく浮かび上がる。
馬牛の苦痛に満ちた凄まじい絶叫と、
死者達が肉を貪り食らう咀嚼音が用心棒の耳に届く。
その群がる死者の中から、黒い塊が飛んで来て、


ドーーーーン!


激しい衝撃音と共にコンテナに叩きつけられた。
馬牛の首だった・・・・。
「ゾンビ野郎どもめ!!地獄に送り返してやる!!」
用心棒が叫び、
闇に向かいライフルを乱射し始める。
それに応えるように、用心棒の足下でたちまち無数の弾丸が木っ端を弾けさせて、木材の下の鉄板を覗かせる。
戦いのゴングは鳴った。

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