《MUMEI》

「畜生!奴ら飛び道具を持ってやがるのか?」
降りそそぐ弾丸の雨が、たちまち用心棒を屋根の真ん中まで後退させる。
明かりの中にぼろぼろの軍服を着た死者達の姿が浮かび上がり、紫外線照射を嫌がってすぐに闇の中へ後退していくのが見える。
「大丈夫か?!」
すぐに屋根の真ん中のハッチが開いて、
相棒が出て来ると加勢してライフルを射ち始めた。


「あなた・・・・!」
ララと身を寄せあうように抱きあっていたマレーナは、いつもは穏やかな夫が
決然たる表情を浮かべて、ショットガンの弾倉に弾を詰め始めるのを見て、
危惧の声を上げた。
梯子を上がりながら「窓の傍には近ずかないように!」と言って用心棒が天井のハッチから出ていくのを見ると、
ペドロはすぐに壁にかかっていた銃を持ち出したのだ。
木材の内側に防弾用に張られた鉄板に、無数の弾丸が当たる音が、部屋中に響き渡る。
窓の隙間から弾丸が飛びこんで来て天井近くの壁を抉ると、
「きゃあー!」
ララがマレーナにきつくしがみついた。
「二人ともなるべく部屋の真ん中に居て姿勢を低くしていなさい!」
ペドロはショットガンに弾丸を装填し終えると、確固たる足取りで窓の傍に歩んで行く。
「旦那様」
すでに窓際で三八口径のリヴォルバーを構えて外を窺っていた御者に向かって、
大きくうなずいた。
「この暗い夜を必ず乗り越えよう」
ペドロは銃身で窓ガラスを叩き割り、
打ち付けられた木板の間から、銃口を窓外へ突き出した。
「死の軍勢め!またこの私から愛する者達を奪おうとするつもりか?!
そうはさせんぞ!!」
ペドロは闇に向かいショットガンの引き金を絞った。

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