《MUMEI》
付き合ってから。
「千雨ー。今日はどうする?」
「今日かー。だって今日雨じゃーん」
千雨はベッドにゴロゴロゴロゴロと転がる。
「うーん、そっか。じゃあ家でゲームでもする?」
「するするー」
受験はすんなり終わって冬休みが暇すぎる。
受験生じゃない千雨は冬休み中はほぼ毎日僕の家に上がり込んでいる。
幸い僕の家は母子家庭一人っ子で、母親は夜遅くまで帰ってこない。
なので、千雨がいても問題はない。
「なんのゲームしよっか。いろいろあんよ」
実のところ、僕らは付き合い始めてから何もしていない。
デートする時に勇気をフルに使って手を繋ぐ程度だ。
だから家にいてもゲームくらいしかやることがない。
雰囲気と流れと空気を巧みに操り、勇気をフル限界突破させればキスはできるかもしれない。
だが、エッチなことは無理だ。
できるわけない。
僕はヘタレなんだ。

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