《MUMEI》
反省
陽菜の舌が、僕の指先や指の間まで撫でる。
今まで陽菜が、こんなに丁寧に僕の体を舐めたことはない。

「陽菜…いい子だよ」

僕が言うと陽菜は、より一層丁寧に舌を動かした。

「ちゃんと反省してるんだ?」

陽菜が頷く。

「じゃあ、なにが悪かったか言って?」

指を抜くと、陽菜は少し苦しそうに息を吐いてから、小さな声で言う。

「…もう…先輩には会わない…裏切ったりしない…、嘘も…吐かない」

「あとは?」

陽菜が困惑した表情を向けた。

「もうないの?今日…しちゃいけないこと、まだしてるよね?」

「……違うって…言わない…」

暫く考えてから、涙声でそう言った陽菜が可笑しくて、笑いが込み上げた。

「それじゃないでしょ?まだ認めないつもり?」

「だって、あれは…っ!」

陽菜が言い終える前に、僕は平手打ちをした。

「口答え、しちゃダメだよ?」

「……でも…」

まだ、何かを言おうとする陽菜に、再び平手打ちをする。

「お願い…っ、聞い…っ」

「やめ…っ」

「ま…っ」

陽菜が何か喋ろうとする度に、平手打ちをしていたら、陽菜が悲鳴をあげた。

「やめてぇぇえぇぇッッ!!!!!!」

「で?認めるの?認めないの?」

僕の質問には答えずに、陽菜は僕の腕を必死に掴んだ。

「怒らないで、怒らないで下さい、お願い…っ、お願いします」

「答えてよ」

「お願い…っ、怒るの…ゃ、だ…怒るの、やだ…」

僕の腕にしがみつく陽菜は泣き疲れた子供みたいに、声も体も震わせている。

「どっちなの?」

「も…ゃ、だ……やだ…」

「それは真鍋に会いたいってこと?」

陽菜が激しく首を振る。

「でもさっき言ってたよね?」

「もう会わないからっ、約束します、先輩の話も、もうしないから…」

「ふぅん…じゃあ真鍋は、もうどうでもいいの?」

陽菜が何度か頷いた。

「だから…佐伯の話は…もう、しないで」

佐伯にされたことが、相当堪えたんだろう。
陽菜のその言葉が、妙に力強く感じた。

「…わかった……じゃあ陽菜のこれからの行動見て決めるよ」

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