《MUMEI》

真知子の携帯電話からメールが来た

場所を示した地図だった

そして、添付ファイルには、下着姿で、縛られてるミズキの写真

来いって、事か

地図の場所は、町外れの、木工工場だった
人気は無い

タクシーでソコに行った俺に、直ぐ様メールが来たんだ

ソコで待て

真知子の携帯電話からだった

何処かで見てやがるな
工場の、中か?

入り口には、鍵が掛かってた

倉庫のシャッターは閉まってる
だかど、土の上に、真新しいタイヤの痕があった
二台かな?

大きな材木で、玄関の扉を壊し始めたんだ

ドカーン、ドカーンと、大きな音がしてた
携帯にメール着信の音がしてたけど、無視した

ズガーン!

鍵ごと、ドアはぶち壊れたんだ

そのとき、荒々しく、一台の車が敷地に入ってきた

そして、中年のオッサンが、運転席から降りてきたんだ
助手席からは、若い男が降りてきた

綾奈は何処だ?!

若い男が、俺の前に来て、そう言ったんだ

アヤナ?、なんのことだ?

惚けるな!
優子と一緒に、アヤナを連れ去ったろうが?!

胸ぐらを掴まれた

何かあってみろ、生きてられると、思うなよ

物凄い力と、殺気だった

なにか?、勘違いしてねーか?

どこまで惚けるんだ、お前、恵太だよな?!

そうだ

お前の妹が、拉致したんだろが!

な?!、ミズキが

ガン!



咄嗟に顎を引き下げ、頭で拳を受けたんだ

言え!、答えろ!
アヤナはどこにいる!

また、拳

男の腕を払いのけ、避けたんだ

話が、見えねーな

静かに、そう言って、身構えた

中年男が、若い男を止めてた
そして俺に

ほらよ、譲渡書もある、好きな値段で買い取れよ

茶封筒を、差し出したんだ

アヤナが先だ!

若い男が、怒鳴ったんだ

訳、わかんねーな
先を急ぐ、失礼するぜ

若い男を見据え、距離をとった
そして、工場の中へ、俺は向かったんだ

誇りだらけの、ちゃちな木造倉庫だった
車が二台、停まってた
その車が突然動き出したんだ!

シャッターを突き破り、逃走しやがったんだ

窓は真っ黒で、中に誰が居たのかは、見えなかった

奥に、プレハブの事務所があった

とにかくソコに、行ってみたんだ

弁当のクズ
吸殻の山

そして、子供の玩具

さっきの若い男が来た
その後を追うように、中年男が来たんだ
そして、そのうしろから
中年女に肩を抱かれながら、よたよたと女が表れた

この女は、真奈美か?

面影がある、俺の、憧れの女性

仲間割れかい?

若い男が俺に言ったんだ

アヤナの玩具よ!
優子が持って出たやつよ!

真奈美らしき女が叫んだんだ

真奈美の子供なのか?アヤナって
優子と一緒に居たのか?

疑問が次から次えと沸いてきた

答えろー!

その疑問ごと、若い男の拳が、俺を貫いたんだ

答えろ!、答えろ!、答えろ!

重たい、拳だった

中年男が、若い男を止めてた

落ち着け、翔!

!翔、こいつが、翔か?

答えて、全部くれてやるから、アヤナと優子を返して

真奈美らしき女が、そう言ったんだ

…………

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