《MUMEI》

翔の拳を、黙ってもらってた

こいつ、知ってやがるんだ
顔面なんかより、腹の方が、こたえるって

尋問するなら、意識を経てない
腹は、意識を経たず、苦しさが続くんだ

はぁ、はぁ、はぁ、答えろ!
アヤナは何処だ!

…知ら、ないん、だ…

しぶといわね、翔の拳をこれだけくらって
、拉致りましょう

中年女の声がした

そうだな、長居は危険だ

中年男の声がしてた

そして、俺はワンボックスの中で、後ろ手に縛られ、床に転がされたんだ

真奈美が具合悪そうだった

奴等に呼び出された場所に、翔が現れた

何が、どうなってるのかわからないけど
逃げ出して、次の連絡を待つより
翔と一緒に居た方が、早そうだよな

くっ、ゲロ吐きそうだ
腹筋を、ぶち抜かれたようだよ

車内に、会話はなかった

車の揺れで、ときたま吐きそうになった

そして、俺の携帯電話の、メール着信音がした

アンタ、妹さん、人質にされてるの?

真奈美の声がした
でも、無視したんだ
何か話すと、ゲロ吐きそうだっし
説明のしようがないしね

俺が、翔たちに拉致されれば
奴等の動きも変わるはず

一義の狙いは、俺の持つ資産だ
翔の持つ、駅前も狙ってるのか?

指名手配されてるはずだ
手に入れて、どうするってんだ?

金を、送金させるのか?
他所の国で、逃亡生活をするつもりか?

考えても、わかんねーよな

絶対現れる、それまで、我慢だ

……………細長い建物の一階のガレージに連れてかれた

手足まで縛られ、車の中にひとり、転がされてたんだ

少し、寝れた
多少、身体が回復した気がする

夢を見た、ミズキが微笑んでる夢を

違う、ミズキは死んだはず
でも、警察の調書を信じれるか?

どのくらい、時間が経ったのか
翔が来た
真奈美もだ

そして、車は走り出し

着いたのは、昼間に居た木工工場だったんだ

ほどくけど、暴れないでね

真奈美が言ったんだ

降りろ、お前の妹が居るはずだ

翔の声がした

車から降りると、チンピラ達がたくさん居た
倉庫の中だった
シャッターは、壊れたままだ

連れてきたぜ、アヤナと優子を返してもらおうか

上に居るぜ

翔!
パパー!

クレーンか何かで上げるような
高い場所に
優子と小さな女の子が、居た

見知らぬ女二人が、見張り役か?

真知子さんは何処だ?

翔の言葉に

それは、恵太次第だな
ミズキを連れて来い!

停められてる車から、縛られたミズキが、連れて来られたんだ

お兄ちゃん!

ミズキ?

そっちの話は、後にしてくれ
アヤナと優子を返してもらう、ほら、譲渡書だ

茶封筒を、投げた翔

若いチンピラが、それを拾い、一台の車に持っていってた

そして、その車の中から、一義が降りてきたんだ!

本物だな、さて、恵太、お前が買うんだ
そして、全てを渡してもらうぜ

ミズキは返してやるよ
悪い話じゃねーだろ?
唯一のお前の家族だ、身体は使わせてもらったがね
そうそう、お前の母親のマ〇コも、なかなかだったぜ

一義の手には、拳銃

チンピラたちは、何も、手にして無い

お兄ちゃん、何処かで静かに暮らそうよ
もう、嫌だよ、こんな街
お金なんか要らないじゃない
ね、全て捨てて、待を出ようよ

本当に、ミズキなのか?

私をわからないの?!

何かが変だ、なぜ、奴等はこのタイミングでミズキを

初めから、ミズキを使えば済むことじゃねーか

ミズキ、父の意志を、忘れたのか?

忘れてないよ、でも、死にたくない
お兄ちゃんと静かに暮らしたいの!

ミズキが、そう、叫んでたんだ

……………

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