《MUMEI》

許してないよ、智子の事もね
でも、本気のご免なさいを聞いたら、何も出来なくなっちゃうよ
許せない事だって、あるよ
でもね、復讐してる時間がないの
楽しいことが、たくさんあって
そっちに時間を使いたいだけ

真奈美の言葉が、重く俺にのし掛かった

復讐するなら、付き合うわ
地獄でも、刑務所でも、付いてくわ

優子の言葉

行かせたくない、留めさせたい
でも、気持ちは痛いぐらい、わかるよ
ヤるなら、完全犯罪だ!

翔、そんなことを

そうね、してきたものね

貴子さんが、昔の話をしたんだ

俺、驚いて、なのに、変に興奮しちゃって

それで、聞き入ってた

やだぁ、小学生を、筆下ろし、したの?

背徳感、あったわぁ
翔に、女を教えたときも、そうだったけど、あの子はどうかしらね?
性犯罪者になってるかもね、そしたら私の罪は重いわよね

どう受けとり、どう行動するかは本人さ
ま、間違った事をしたことに、変わりはねーけどな

翔だって、殺意あったでしょ?
暴漢が、私と春奈を襲ったとき

あら、私も襲われたのよ

チャチャ入れないで!

ん、あったな、恵太ぐらい強かったら、殺してたんだろうな

恵太は殺人鬼じゃないわ!
強すぎた、だけよ

よかったわねぇ、翔、あのとき、恵太君が反撃してきたら

うん、秒殺されてたね

また、変なチャチャ入れて!

違うよ、真奈美、
貴子叔母さんは、無用に力を誇示しないって、言いたいんだよ
恵太の力は、自分のためには、使われない
亡くなった、家族の、無念を晴らすための力なんだよ

恵太、その力を、生きてくために使おうよ
死のうとしてるよね?
死に場所を探してるの?!
自分だけ、生き残ったんじゃないよ!
生きてって、家族の願いが奇跡を起こしたんだよ!

優子、泣きながら、叫んだんだ

その声で、アヤナちゃんが、起きたみたいだった

泣きながら

ママぁ、って

アヤナちゃんを抱っこする、真奈美

………俺をなめるなよ、恵太
どんなことに巻き込まれても、必ず守りぬく
今、思ったろ、ヤッパリ、離れようって

翔の言葉に、堪えてた涙が

歯を、食い縛った、けど

恵太ぁ、どっか痛いの?
お薬あるよ

アヤナちゃんが、俺の前に来て、
俺の頭を摩るんだ

まだ、3才の女の子なのに、

うん、優しさが、痛いんだ

アヤナちゃんに、わかる、わけもないのに、
そんなことを、俺、言ってた

アヤナ、おいで、恵太お兄ちゃんは大丈夫だから
私とご飯食べよう
お腹すいたでしょ?

うん

春奈ちゃんが、アヤナちゃんを連れて行ったんだ

優子が、俺を抱きしめた

貴方に、必要とされたい
邪魔って言われても、そばにいる
側に、いさせてよ、
多くの中の、一人でいいから、
何かしたくて、仕方ないの
貴女の役にたちたくて、仕方ないの

優子を、見れなかった

泣き顔を、見られたく、なかったから
うつむいてたんだ

皆が気をきかせたみたいで、優子と二人きりになってた

疲れたら、寝るのが一番だよ、みんなに甘えちゃいなよ

優子の胸に、抱かれたんだ

昔、マリコの胸に、甘えたっけなぁ

心地良い、温もり

甘えていいのか?

それで、俺は、この先どうすんだ?

おさまらない、この、気持ちの行き先は、何処へ行くんだ

許せない、どうしても、おさまらない

この手で、殺さなきゃ、
でも、塀の中、奴等は、塀の中なんだ

何十年も待ってでも

待てなくなりそうだ
ここは、温か過ぎて

薄れてくと、言うのか?

父の無念を、母の痛みを、ミズキの悔しさを!

ダメだ、薄れさせたら

俺は、戦うために育てられたんだ

戦わなきゃ


なのにぃ

くっ、うっ、ううっ

拳を、握り締めてた

その、俺の拳に、優子の手が、そっと覆って

誰よりも、貴方の幸せを願ってるのは、
貴方のお母さまよね
恵太が幸せになる道に、進もうよ

そう、言ったんだ

……………

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