《MUMEI》 甦る記憶『気にしないでください(^_^) じゃあ2時に駅前で待ってますね』 『わかった。 ありがとう』 真鍋からのメールを見て、僕は携帯を放り投げた。 昨夜も何度も体を重ねたせいで疲れてるのか、陽菜は僕の隣で規則的な寝息を立てている。 あの日を最後に、陽菜とは普通の恋人同士みたいなセックスしかしていない。 「陽菜…」 頭を撫でると陽菜は眠たそうに目を開け、僕の手を握った。 「おはよ」 僕が言うと陽菜は微笑んで、また目を閉じた。 安心しきったその表情は子供の頃に、よく見せた表情だ。 「…陽菜…?」 再び目を閉じた陽菜に呼び掛けてみたけど、陽菜は気持ちよさそうに眠っている。 そんな陽菜の手首に、僕はあの日以来、机の中に眠ったままでいた手錠をかけた。 ガチャッという音と同時くらいに、陽菜が目を覚ます。 今度は眠たそうになんかじゃなく、大きく目を見開いて。 「おはよ」 さっきと同じ表情で、同じ言葉を繰り返す僕とは対照的に、陽菜は怯えた瞳で僕を見ている。 「気持ちよさそうに寝てたね?」 「……なん…で…」 状況を理解しきれてない様子でいる陽菜の腕を、ベッドのパイプに繋いでいく。 予想していなかったことが起きて思考がストップしているのか、陽菜は抵抗もせずに、ただただ僕を見つめている。 「…眞……季…」 「今日は、お留守番だよ」 不安そうな声で、僕を呼ぶ陽菜に言った。 「……ぁ…あたしも行く」 前に部屋で僕を待っていたときのことを、思い出したんだろう。 泣きそうな顔で、陽菜が言った。だから僕は、 「大丈夫、悪いし」 そう返した。 陽菜が僕を避けようとしたときと、同じ言葉を使った。 陽菜は僕が自分と同じ言葉を使ったことに、気付いただろうか…。 唇をキュッと結んで、悲しげに僕を見るその表情は、気付いたと判断していいだろう。 初めてお留守番をした日と同じように、陽菜の足をロープで固定していく。 「眞季…ごめんなさい…」 震えた声で、陽菜が言った。 「どうしたの?声震わせて…怖い?泣いちゃいそう?」 足を大きく開いた状態で固定された陽菜の頭を撫でた。 前へ |次へ |
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