《MUMEI》
channelメガネ君6
体液でベタベタした肌をシャワーで流す。
先輩が一緒に入りたがるので、半ば強引に入られる。
けだるい体を引きずりながらバスタブの縁に腰掛けていると先輩が首からゆっくりぬるま湯をかけてくれた。

子供の頃はお父さんによくお風呂に入れられて犬みたいにワシャワシャ体を洗われていた、まさにそんな状態だ。

「中は綺麗にした?」

尾てい骨に添ってぬるぬるになっている窪みを撫でられて、咄嗟に壁のスロープに掴まる。

「駄目だよ、清潔にしておかないとばい菌入るからね。落としてあげる」

「ええっ……」

教えてくだされば自分でするのに、既にシャワーのお湯は指の入ったお尻に向かっていた。
腸の中をお湯で濯ぐという、酷く疲労感を伴うシャワーだ。


「洗い立てのメガネ君だ。」

バスタオルで包まれて水滴を拭き取られた。
服はクローゼットの一番高いところに隠されていてすぐには取り出せない。


「先輩、ベッドの上も掃除しないと……」

「あとで。明日からまた日曜まで会えないからゆっくりしよう…?小腹空いた」

あんなに散らかしたのに、なんて優しいんだろう。
手を繋がれたまま先輩は冷蔵庫の中を漁っている、調味料がたくさん並んでいた。

「冷凍ピラフあった、食べる?」

「まだお腹いっぱいです。美味しいですよね」

「うん、美味しいよね」

調子を合わせて先輩は相槌を打ってくれるので話しやすい雰囲気にしてくれる。

「先輩、お誕生日おめでとうございます」

「うん」

真っ正面だと伝え難いから電子レンジを触る後ろ姿に向かっている時に勇気を出して言えた。
聞き流して貰えたと思いきや、先輩がこちらに向き直る。

「有難うね?」

「わあ……うわあー……」

腕を引き寄せられて耳元で囁かれた。頭がこんがらがって奇声が漏れてしまう。

「メガネ君ってまだ俺に慣れていないのか。一緒にどっか泊まったら慣れるかな?同じ部屋で温泉に浸かるの、どう?」

「心臓止まります!」

「大袈裟だな」

軽く受け取られたが笑い事ではない。
先輩と同じ空気を吸っているだけでおかしくなりそうだ。

「でも……俺もメガネ君といるとどきどきしてるの、知ってた?」

手の平を先輩の逞しい胸板に運ばれて猫の手になっていた。

「――――そういえば!
先輩のおかげで数学のミニテスト平均点でした!」

「……そう。いい子」

頭を撫でてくれると、落ち着く。

「せんぱい……」

「ん?」

「怒ってます?」

「んー、ぜーんぜん怒ってないよ?」

「ひゃ、ひゃ……」

やっぱり口説き文句に耐え兼ねて突き放したことに、怒っていたのか頬を抓られた。

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